~じっくり、たっぷりあそぶことは、子どもの財産!~第5回 五感を使った実体験を子どもたちに!

平成20年9月2日

 数年前、ある公立保育所から園内研修での助言者の依頼を受けました。園の先生方は、お絵かき、粘土や折り紙を使ったあそびにくわえ、「脳の発達」と関係すると言われているビーズ通し、シール貼り、雑巾縫いなどの手先・指先を使ったあそび・活動を重視した実践に熱心に取り組まれていました。鉛筆、箸、ハサミが上手く使えない、集中できない卒園生が多いと小学校との連絡会で指摘されたことが研修のきっかけになっていることが、先生方との話の中で推察されました。教育改革の課題の一つである「幼保-小連携」活動の一環とも言えますが、「小1プロブレム」の解決を保育所の先生方が一方的に押し付けられているとの印象を持ったことを覚えています。

 「三間の喪失」「ス漬の生活」が進行する中で、からだを思いっきり動かして、子どもたちの五感をフルに使いながらあそぶ体験をさせたいと願っている保育所、幼稚園の先生方は少なくありません。しかし、「何でも早ければいい」「小学校での学習に適応するために」という価値観が優先し、親や大人の思い通りになる「いい子」であることが求められるようにも思われます。思いっきりあそびこむことよりも園での様々な習い事や行事の充実を要望する保護者の声が強いことも事実です。

 「脳の危機」に関わった積極的な発言を行っている正木健雄氏(「脳をきたえる『じゃれつき遊び』」,主婦の友社)は、大脳前頭葉の「興奮」と「抑制」のバランスがとれず、その切り換えを上手くできない子どもが増加していると指摘しています。大人と、さらに、子ども同士で十分に「興奮」しながら遊びこむことなしに、子どもの「抑制」の力は育っていきません。「いい子」になるために「抑制」を強いるのではなく、乳児期以降のあやしあそび、スキンシップ、じゃれあい、とっくみあいといった身体接触を伴うあそびをじっくり、たっぷり積み重ねていくことが求められています。鐘ケ江 淳一

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