自尊感情について

平成18年4月3日

 自尊感情というのは、自分に対する肯定的な感情のことを言います。自分はそれなりの能力と、良い面をもった大切な存在なのだという気持ちのことです。自尊感情の高い子は、精神的に安定し、何事にも積極的です。自分を律し、自分を大切にした生き方ができます。志をもって前向きに生きる子であるための最も重要な条件と言ってよいでしょう。

 ところが、最近の子ども達はこの感情がとても低い傾向にあります。福岡県(2001)の調査によると、「自分は何をやってもダメな人間だという感じが『よく』『時々』ある」という子が小学6年生で48.4%もいます。この数値は外国の子どもと比べて非常に高いものです。因みに私の教え子のグリシェンさんが同じ調査を中国・新疆ウイグル自治区の区都ウルムチの小学5・6年生に実施した結果では、半分以下の19.9%でした。日本の子ども達は 「あなたの良いところは?」と尋ねられてもあまり言えません。それが「良くないところは?」と聞くとたくさん出てきます。自分を肯定的に捉えることができないのです。最近の子ども達の様々な問題行動の背景にはこの自尊感情の低さが考えられます。

 なぜ自尊感情が低いのでしょうか。それは、体験すべきことを体験していないからです。例えば、遊びのなかには仲間をリードしたり、難しい課題にチャレンジし、それを克服して自信をつけたり、仲間から尊敬されたり、認められたり、様々な体験が含まれています。ところが、その遊びが今ほとんどありません。親の手伝いをしたり、幼い子の面倒をみる体験も欠けています。欠点を指摘されることはあっても、人の役に立って誉められる機会はめったにありません。これで自分が有能な、大切な存在だという感情が育つでしょうか。

 子どもの自尊感情を高めるのに特別の方法があるわけではありません。遊びや手伝いや何か良いことをして認められるといった、何気ない日々の生活体験の積み重ねが大切なのです。児童期は自尊感情が育つ大事な時期です。せめて休日は友達と十分遊ばせてください。自分のことはもちろん、家の手伝いもきちんとさせてください。そして、勉強のことだけでなく、子どものちょっとした良さや伸びに目を向け、心から誉めてやってください。

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