~コミュニケーション~ 第1回 時間と空間の共有

平成21年5月16日

 近頃よく、コミュニケーション能力の欠如という言葉を耳にします。コミュニケーション能力は小さい頃から、いろいろな人と話をしながら、また、話し方を学びながら上手になるものです。でも、コミュニケーション能力の欠如という背景には、失敗したら恥ずかしいという思いや、変なことをいって相手に悪い気をさせないかなど心配で、思い切って話ができないことが、結局言葉足らずを生み出させたのかもしれません。今回、私の担当では、小学生という幅広い年齢の子ども達に対するコミュニケーションについて考えてみたいと思います。

 本当は、上手な話し方を習いたいかもしれませんが、まずは、距離感をせばめる方法と話が弾みやすい空間的位置関係から初めてみましょう。子ども同士でも、大人と子どもとでも近くにいること、それが文字通り距離感をせばめる一番の方法です。側にいる時に、何かを話す必要はありません。側にいて同じものを見ているだけでいいのです。遠くにいると、声をかけるのにわざわざ大きな声を出さないといけません。声が小さいと相手に聞こえないので言い直さないといけないこともあります。言葉は思わず強くなり、社会的で形式的なものになりがちです。近くにいれば、微笑むだけで意志が通じることだってあります。目が合うだけでコミュニケーションがとれることもあります。これを重ねると、お互いに相手に対する好意が生まれるものです。これは単純接触の効果といって、ちゃんと実験で証明までされていることです。もし、一緒に何かをすることがあれば、それはもっとコミュニケーションをとりやすい状態になっていることになります。そんな時に自然に話しかけやすく、話が長続きしやすいのは、90度の位置関係だといわれています。ちょうどテーブルの角を挟んでとなり合って座っているような感じです。正面に面と向かってしまうと、時として圧力を感じてしまいます。会話が弾むためには目を見つめすぎず、しかし適度に目をあわせやすい90度の角度が一番いいのでしょう。

 さて、家庭の中では、子どもは遊びも勉強も子供部屋で、と考えている方が多いようです。でも、前述の話を考えてみても、少なくとも小学生の間は、親が家事や仕事をしている側で活動をし、時間と空間を共有することがとても大切です。どうしても難しいようなら、お互いが見えるだけでも距離感を縮めることができます。もちろん、ただ、側にいるだけでなく、時間と空間を共有しているというあたたかい思いが必要です。どんなに側にいてもそこに子どもがいることを感じてあげなければ子どもから発せられるいろいろなメッセージに気づくことはありません。

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