思春期における「現代を生きる子どもたちへ〜自己肯定感を育むための理解と関わり方〜」②

 

令和3年5月27日

 今年の梅雨入りは早かったですね。季節の変わり目は特に体を労ってあげたい時期です。
 さて、今回は「その子らしい時間の使い方をサポートする意義と方法」について、お伝えします。

1)「家庭学習の時間」「睡眠時間」を見直しましょう
 「帰宅すると疲れてダラダラしてしまう」「勉強もしなきゃいけないのは分かるけど、ゲームもしたい」「宿題が多すぎて徹夜になった」 「朝、自分で起きられない」など、子どもたちの家庭での時間の使い方の相談がよくあります。
 思春期の子どもにとって下校から翌日の登校までの時間は、自分でマネジメントできる貴重な時間です。学習など“やるべきこと”ばかりでその時間を埋めてしまうと、自分がしたいことができず折角の学習も“やっつけ仕事”になってしまいます。また、「徹夜ですればいい」というのもお勧めしません。睡眠不足などセルフケアを怠っていると、体調だけでなく、考え方もネガティブになり落ち込みやすくなるなど、自分を大切にすることが難しくなります。ですので、お子さんに必要な「睡眠時間はどれくらいか?」「睡眠や食事など生きるために必要な時間を除き、学習時間はどのくらいか?」を客観的に知ることが大切です。

2)主体的な時間の使い方と自己肯定感の関係を知りましょう
 学校生活では、時間割があり、その日1日何を学ぶかが決められている、いわば“受動的に”時間を使います。確かに効率よく学ぶためにはカリキュラムが必要です。一方で、“受動的に”ばかり時間を使うと、「余暇活動ができない(疲れを取るなどリフレッシュができない)」「作業の段取りができない」などのデメリットもあります。時間の使い方にも柔軟性(その子らしさ)が求められます。ですので、思春期のうちにお子さんが主体的に時間の使い方を学ぶことで、能動的で豊かな人生を歩んで欲しいと思います。
 高校生を対象とした「時間の使い方を学ぶ授業(タイムマネジメント)」を実施し、その前と後での効果測定をしたところ、「作業にかかる時間の見積もり」ができるようになり、自己肯定感の低い子どもの自己肯定感が高まったという結果となりました(山下・稲田,2020)。
 この結果から、子どもたちが「その子らしい時間の使い方」を学ぶことは、自己肯定感を高める一助になるのではないかと考えています。

3)お子さんに合う「時間の使い方」を観察しましょう ―タイムログ(記録)の取り方―
 宿題が終わる時間が「学習時間」、眠たくなった時が「入眠時刻」となっていませんか?宿題にかかる時間、睡眠に必要な時間は個人差があります。確かに宿題は優先すべきことですが、その宿題が終わらず、睡眠時間が十分に確保できず、睡眠不足の状態で授業を受け続けると、集中力も低下し、効率よく学習することも難しくなります。
 そこで、帰宅して宿題や学習にどのくらい自分が時間を使っているかの“見える化”をします。たて系列に時間軸、横系列にその日にやったこと(行動)を書く「バーチカル」を準備します。(記録用バーチカルをご活用ください)最近では、バーチカルを使った生徒手帳もあります。そこに、実際にその日は何にどれだけ時間を使ったかを、お子さんの行動が見えるように書き出します。
 “わざわざ書き出さなくても分かる”と思われるかも知れませんが、自分の行動を書き出してみると隠れた”自分の時間の使い方のクセ“に気づきます。これまで「行動ログ(記録)」をとったお子さんから「寝る前の友達とのS N Sで、寝つきが悪くて必要な睡眠時間が取れなかった」「やることが多すぎると思っていたけど、取り掛かるまでの時間が長かった」との報告がありました。
 このタイムログ(記録)は、子育てや仕事に忙しい保護者の皆さんにも好評で、「やることが多すぎてイライラしていた」「タイムログ(記録)を見直し、家事の分担をして、時間も気持ちも余裕を持てた」などと言われています。まずは、保護者の皆さんから普段の1日のタイムログ(記録)を書いてみませんか?
 次回は、なかなか大人のいうことを聞けない思春期のお子さんへの理解と関わり方についてお話しします。

引用文献 山下雅子・稲田尚史(2020)専修学校における時間管理プログラムの効果 ‐思春期の自己肯定感に注目して‐福岡県立大学心理教育相談室紀要 (12), 47-55

 

(バーチカル記入例)
Verticalkinyuurei.jpg
(バーチカル用紙)
Verticaldownload.jpg

 

 

 

 

< 前の記事     一覧へ     後の記事 >