~親と子の円滑なコミュニケーション~親子のコミュニケーション(その3)「寄り添うということ」

平成20年1月1日

 Fさんには中学生2年生のK君がいます。2学期になってから学校に行けなくなりました。「学校に行きなさい」と言っても、布団の中に潜り込んだままで動こうとはしません。学校には行けませんが塾には行っています。塾で友達と会うのが楽しみな様子です。

 学校で何があったのか「別に」と言うばかりで話してくれません。学校に行けなくなって1ヶ月が経った頃に、K君はようやく打ち明けてくれました。学校で嫌がらせにあっているとのこと。そのことが原因で、先生にも誤解されて叱られ、学校に行くのが嫌になったというのです。
  K君はもともと人の目を気にし過ぎるタイプなので、「あなたは気にしすぎるのよ。」とか、「先生だって間違えることもあるさ。」、とFさんはK君に言いました。K君は「分かってるけど頭にくるんだ。」「誤解されたままではもう学校には行けない。」と悔しそうに目に涙をためて言いました。その話を父親に伝えると、父親も「気にするな。そんなこと働き始めたら日常茶飯事だぞ」とFさんと同じように言いました。そういうやり取りがあっても、K君の状態は変化なく、学校には行けず塾との往復を続ける毎日です。

 私たちは大なり小なり子どもとこのようなやり取りをしているように思います。「気にしすぎるのよ。」とか「世の中ってそういうものなのよ」と子どもに教え諭しています。でも、子どもも中学生くらいになると、そういうことは少しは分かってはいるのではないでしょうか。それよりも、自分の気持ちを親に分かって欲しいと思っているからこそ、悔しかったこと、イライラしたことなどを親にぶつけてくるのではないでしょうか。
 親の私たちは、何か子どものヒントになること、役に立つことを言おうとしますが、子どもが待っているのは、「そうだったの。悔しかったのね。」「悲しかったんだねえ。」という言葉ではないでしょうか。自分の気持ちを分かってもらい、共感してもらいたいということではないでしょうか。

 一旦、自分の気持ちに親が寄り添ってくれることで、子どもはほっと安心し、落ち着くことができます。そうすると、親の言うことも心を開いて聴くことが出来るようになります。まずは「子どもの気持ちに寄り添う」を意識して取り組んでみませんか。失敗しつつも、少しずつ“寄り添える親”になっていけるのではないでしょうか。

教育文化研究所 

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