野口 紀子 先生

1.「思春期」ってどんな期?

令和6年4月23日

 思春期の特徴を成長発達の視点から言えば、幼児期の自己中心性(「わがまま」という意味ではなく、「自分中心に物事を認識する」という意味です)から周囲の状況に目が向き、それ故に自分の立ち位置があやふやになり精神的にも不安定になる時期です。社会性を養う上で周りに意識が向くのは大事なことなのですが、思春期において気を付けたいのは、「ことさらに周りを気にし過ぎる」という点なのです。特に同世代の人たちのことがやたらと気になります。そして、ほんの半径数メートルくらいの人間関係に大きな影響を受けます。親は「友達なんて他にいくらでも作れるでしょ」とか「世界はとても広いのだから、そんな狭い人間関係に悩まなくてもいいのに」と思うかも知れませんが、思春期の子どもは半径数メートルが世界の全てであると感じていることを、親は理解する必要があります。

 「思春期イコール反抗期」と思っておられる方も多いと思いますが、これは大きな間違いです。「反抗」は時期の問題ではなく関係の問題です。幼い子どもでも大の大人でも、自分に対して侮辱的で押し付けがましい人には反抗的になるものです。思春期が反抗期と捉えられがちなのは、子どもが自分で考え行動することが親の意向に反する場合が増えてくるからです。ですから、子どもが反抗的だと感じることがあれば、親の側が自分の意向を押し付けていないかと反省しましょう。私も時々、周りの親が子どもに対して必要のない指示や小言を言っているのをよく耳にします。親は余計なことを言い、子どもはうるさく感じます。それを親は反抗的だと取ります。ですから、親が言えば言うほど関係は悪くなっていきます。

 もっときちんと子どもの話を聞いてあげてください。子どもは一生懸命に考えているのです。普段から子どもの意見を尊重し(何でも子どもの要望通りにするという事ではありませんのでご注意ください)、子どもの自立を支援している親であれば、思春期の子どもでも反抗はないのです。