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?「初夏(はつなつ)のプラットホーム南へと急ぐ列車の予感と風と」

2006年05月19日

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ゴールデンウィークや心地好い気候に誘われて、5月はおでかけする機会も多いのではないかと思います。
おでかけする時に乗り物での移動は付き物。そこで私の短歌の中から「乗り物」の歌をご紹介したいと思います。

待ち長き赤信号の車窓より駄菓子屋に集う子らを見ており

娘が生まれてから「子どもを乗せて運転するのは危ない」という夫の心配により一旦車を手放したのですが、
昨年の夏からドライバーに復帰しました。
行動範囲もぐぐんと広がって、子どもをかかえての移動がこんなにもラクだなんて夢のようでした。
その反面どこにでも行けるさびしさ…みたいなものを時折感じたりもしましたが。
今現在は通勤に欠かせない自家用車。
この歌はずい分前のものですが、どこの駄菓子屋だったかなあ。
信号待ちでなにげない風景についみとれてしまったりします。
信号が変わったのに気付かなくて後ろの車にクラクション鳴らされたり…
ドライバーの皆さん、気をつけましょう。(私だけか?)

会話なき家を出ずればタクシーの中でも僅かに饒舌となる

娘がしゃべり出すまでの子育ての時間は、思った以上に孤独でした。
夫は日付が変わらないと帰って来ず、いつしかなにも話してくれなくなったので
誰とも会話をしない日も少なくなかったです。
めずらしく娘を夫に託して出かけたある日、この歌のようなことがありました。
「言葉のキャッチボールが成り立っていること」が嬉しかった。
天気の話とかすごくどうでもいい話だったけど。
そしてそんなどうでもいい会話に饒舌になっている自分が悲しくもあった出来事でした。

思い出をみつめるようにバスの中進行方向に背をむけている 
(1989.5.1 朝日歌壇掲載 島田修二選)

自転車のうしろに乗りて君の背に宇宙みているしがみつけずに 
(1990.7.23 同 佐佐木幸綱選) 

バスと自転車も通学に欠かせない身近な乗り物でした。これまたなつかしい高校時代の歌。
好きな人の自転車の後ろに乗ることは女子高生(だった私)の憧れでした(笑)

通学に欠かせない身近な乗り物といえば電車。

夕暮れの快速電車がまといたる風が連れ去る私の一部

電車は身近でありながらも、遠くへ行きたい衝動にかられる
心ときめく乗り物です。
「駅」や「プラットホーム」という響きがドラマチックだし、
どこまでも乗っていたい心地好い揺れ。
「線路は続くよどこまでも」なんだけど、ちゃんと終わりがあって、
それはなんだか人生にも似てる気がします。
目的地があって、そして帰ってくるところがあるからこそ安心して旅に出られるし、
いつかはわからないけど終わりがあるから安心して生きることができるのだと思うのです。
(おおっ、なんだかテツガク的だわ)

あたたかな夜を流れるモノレールまどろむ体と一日(ひとひ)を乗せて

滅多に乗ることはないのですが、モチーフになったのはご存知北九州モノレール。
クリスマスには娘と「サンタ列車」に乗りました。
この歌は通勤帰りを詠んだものですが、実際のモノレールは競馬場へ行く人でごった返してるイメージが強いです。(笑)

滅多に乗らない乗り物といえば船。

時の船私を運べさびしさの岸辺を離れて遠く遠くへ

さびしさの岸辺を離れる旅ならば、夕暮れの海に漕ぎ出すのがいい。
もしくは霧の立ち込める朝に。
いずれにしても静かな長い航海をイメージした一首ですが
反対に意気揚々とした船旅は

乗り込んだ船ならすでに動いてる二〇〇一年ロマンスの旅

これは1997年の作品。
ロマンスの旅の果てにたどりついたのがここかよっ
とつっこみを入れずにはいられない現在ですが…。
 
きっ、気を取り直して
海ときたら次は空。
空の旅といえば飛行機でしょう。

片思い紙ヒコーキに折りこんで窓から飛ばすいくつも飛ばす

飛行機の歌を探したのですがこれしかありませんでした。
紙ヒコーキとは…
私らしいスケールの小ささにちょっと泣きたくなりました。
気を取り直して…

銀河系ひと廻りして来年の夏まで飛んでけロケット花火

ロケット!
これは大きい!
でも…ロケットで旅ができるなんていつのことでしょうね?

いろんな乗り物の歌を挙げてみましたが
便利さでいえばともかく、速さでいうならば歩く速度が私は一番好きです。
景色や風に季節の移り変わりを感じながら
立ち止まったり、寄り道したり。
最近「マーチングマーチ」という歌を娘と一緒によく歌います。

 みぎあしくん ひだりあしくん
 かわりばんこ かわりばんこ
 ぼくをはこんで チッタカタッタッタッタァ
  (作詞:阪田寛夫)

という歌詞があるのですが
右足と左足が自分を運んでいく
という発想がすてきだなと思います。

そういえば最近時間に追われてばかりで
ゆっくり歩くことを忘れていたような気がします。
今度の休日がお天気だったら、久しぶりに近くの公園まで
娘と歩いて行ってみようかな。

葉洩れ陽が閉ざしたここは森の中 子の手を引ける時期(とき)は短い


(歌人 松井 央利子)

(※短歌を無断で使用、引用することを禁じます。)

投稿者 Kosodate : 2006年05月19日 14:44

コメント

夕暮れの〜が、すき。
あなたのルーツが見えて、嬉しいわ。

投稿者 mina : 2006年05月20日 09:58



minaさま

コメントありがとうございまする。
短歌を通して私のルーツをたどっていただけるなんて光栄です(笑)

投稿者 yoriko : 2006年05月23日 02:19



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