ふくおか子育てパーク

« ?「初夏(はつなつ)のプラットホーム南へと急ぐ列車の予感と風と」 | メイン | ?「わが元にただ一度子を運び来て二度と来ることのないこうのとり」 »

?「犬の名も呼び間違えて一日に子の名を何度呼んでるだろう」

2006年05月23日

ブログ?

今回もお題シリーズ。今回のお題は「動物」。
最近では北海道の動物園をはじめ、各地の動物園が話題にのぼっていますね。
拙作の「短歌動物園」にもこの5年くらいの間に三十余首、20種類近い動物が登場していました。
その中から子育ての現場から生まれた歌を中心にご紹介いたします。

「ブルドック」とうまく言えない子にわざと何度も言わせている「ブルブック」

今回のタイトルにも出てきました「犬」。
うちでは犬怒ってんだか子ども怒ってんだかわからない状態です(笑)
そして「ブルブック」。
「おほしさま」が「おそしさま」だったり、「たなばた」が「たまわた」だったり、
完成されない言葉のかわいさをもっと入念に書き綴ってればよかったなあ。
最近では「ブルドック」と言うようになってしまいちょっとつまんないですが、
保育園で習ってきた ♪おーむねをはりましょ のばしましょ〜 という歌の
「お胸」の部分を「おぶね」と言うのがおもしろくてやっぱり何度も歌わせてます。

眠る子の重み集めて鳩尾(みぞおち)に食い込むおんぶ紐の結び目

ここで出てきたのは「鳩」。
辞書を引きながら鳩のしっぽと書いて「みぞおち」と読むことにおもわず「へぇ〜」ボタンを探してしまった私です。
体力のない私はおんぶ紐よりもだっこ紐をよく使ってました。
外出すると「へぇ〜今は前に抱く紐があるんやねえ」とこれまたトリビアなご年配の方によく出くわしました。
それでも家事をするときはだっこのままというわけにはいかず、おんぶ紐をしぶしぶ使いましたがあの重さと鳩尾の痛みときたら…
今ではなつかしい痛みであります。

しろやぎがおてがみだしたらくろやぎにたべられるうたの終わりは知らず

♪しろやぎさんからおてがみついた くろやぎさんがぁよまずにたべた
ずっと疑問に思っていたのですが、この歌は何番まであるんでしょう?
終わりを知っている方は是非ご一報を。

ママパンダに叱られ子パンダしゅんとするそこでパパパンダ子パンダかばう

「これ短歌?」って思うでしょ?
ええ。一応短歌です(笑)
声に出して読んでみて下さい。さながら早口コトバ。
パンダってのほほんとしたキャラクターですが、結構獰猛らしい。
パンダ界でも最近のオスは元気がないそうで、育児放棄する母パンダがいたり
なんだかとっても人間くさいんですね。
ありがちな家族のひとコマですが、我が家はこうはなれなかった。
家族のあり方ってこういうのがうまくいくんじゃないかなあと思いながら、
あえてパンダを擬人化して作った一首です。

子が泣いているかと惑う真夜中に愛を語らう猫の鳴き声

こどもを寝かしつけたあとでゆっくり風呂に入ろうと思うときまって泣き出すのはなんでだろう。
とくに乳児期はびくびくしながら夜中に起きてました。
(いまだに私が夜中に起きてると嫌がらせのように泣くのはなんでだろう)
あの「びくびく」はちゃんと子どもに伝わっちゃうんですね。
発情期の猫の鳴き声って子どもの泣き声とよく似ているので「びくびく」ゆえに
何度もおびやかされたものです。

喰い破りなお食いちぎるライオンの牙して生きてみよ悔しくば

想像していた以上にしんどかった乳児期の育児から私を解き放ったのは短歌でしたが、
私を苦しめたのも短歌でした。当時、託児で肩身のせまい思いをしつつ必死の思いで歌会に出席していたものの、
自信喪失しながら帰宅することがしばしばでした。
誉められもけなされもせずに、あたりさわりのない評価をされたときのくやしさ…
自分への腹立たしさと自分への鼓舞と…
帰りの電車の中の悔し紛れの一首です。

そのはねでとびたいそらがあっただろうめつむるぺんぎんだきしめたくなる

時折見え隠れする私の心の中に棲んでいるペンギン。
私にも、
飛びたい空がある。


(歌人 松井 央利子)

(※短歌を無断で使用、引用することを禁じます。)

投稿者 Kosodate : 2006年05月23日 15:26

コメント

はじめまして。偶然から、このサイトを発見しました。
松井さんの短歌拝見しました。子育ての大変さが短歌に託しているのでしゅね。子育ての嬉しさ・お子さんの成長の歌を一度拝見してみたいです。確かに子育ては大変ですよね。何人かいらっしゃるのですか?お子さんへの愛情を詠ったものはないのですか?また、楽しみにしてます。あなたにとって心の中に棲んでいるペンギンってなんでしょう。ちなみに私は、海という空をペンギンは飛んでいるんだと思っていました。なんだか、哀しい歌が多いですね。

投稿者 ゴン太 : 2006年05月27日 15:55



その時 心にあるものを歌にするのもひとつの勇気‥。そして 噛みしめるように 何度も読み返して あなたの世界を見てました。本をよんでいるような
ブログでした。ありがとう。

投稿者 はっさく : 2006年05月30日 23:12



ゴン太様

貴重なご感想をいただきありがとうございます。
「海という空をペンギンは飛んでいる」というゴン太さんの感性、素敵だなあと思いました。
もしかしてゴン太さんも短詩型に携わっていらっしゃる方ですか?なんだかとても詩的でしたから。
そして私の中のペンギンとは?という質問。これまた詩的な質問です。しいて言うならば「あこがれるものに手を伸ばそうとしても届かない未熟な自分」でしょうか。
「他の作品も読みたい」と思われる歌を作ることはひとつの目標でもあるので、「また、楽しみにしています」というコメント、とても嬉しかったです。

投稿者 yoriko : 2006年05月31日 01:43



はっさく様

噛みしめるように読んでくださってこちらこそありがとうございます。
どんな分野でも、ひとつの作品を完成とみなす瞬間に勇気って必要な気がします。
「まっ、いっか」ではなく「よし」と断言する勇気。
「まっ、いっか」が結果オーライなこともありますが、「よし」としたものが認められるとそれは大きな自信になりますよね。うん。そうだそうだ。(ひとり納得:笑)
「本をよんでいるような」と感じて下さったことに励まされました。

投稿者 yoriko : 2006年05月31日 02:02



コメントしてください




保存しますか?


Copyright© 2005 Fukuoka Prefecture. All Right Reserved.