斎藤 哲瑯 先生

“家庭は安らぎの場所”に!

平成29年11月25日

 長年にわたって、子どもや保護者を対象に調査を行ってきましたが、特に子どもにとっては、「家庭が楽しい」が極めて重要なキーワードであることが明らかになってきました。

 それは、「家庭が楽しい」と答える子どもは、親への信頼度が高く、学校は楽しく友だち関係も良く、健康状態は良好で夕食後の家族の会話時間が多いことなど、プラス傾向が強く現れてくるからです。

 最近、多くの子どもたちから、「親は、勉強しろと口うるさい」という話をよく聞きますが、ある男子中学生は「ママの中学生時代の成績表を見せろ!」と、母親に詰め寄ったといいます。“良い学校に入れたい”との親の気持ちはよく理解できますが、成績による数値評価は、子どもの人間性や感性などが無視されます。そのため、成績優秀な子どもは何とか救われますが、そうでない子は家庭も学校も楽しくないものとなってしまう可能性があります。

 前掲の子ども調査(平成22年)(※)では、子どもは「家庭は楽しい」82%、「家庭は楽しくない」8%と答えます。家庭が楽しい理由を、「家族の会話が楽しい」68%、「親が話を聞いてくれる」52%、「自分を信じてくれる」39%、「親に何でも相談できる」31%のように挙げ、これが、家庭に望む子どもの偽らざる気持ちなのです。

 家庭とは、“家族の信頼関係のもとに、語り、笑い、ともに楽しめ、安心して生活ができるところ”といえますが、そのためには、家庭に数値評価を持ち込まない、友だちと比較しない、子どもの声に耳をしっかりと傾けることが、最も大切にされなければなりません。子どもたちにとって、明るく楽しい家庭こそが、活力の源と言えるでしょう。
 

地域とのふれ合いを積極的に!

平成29年11月2日

 私たちは“人から認められたい”、“人のために何かをしたい”と思うものです。しかし、子どもの日常生活が「家庭」や「学校」などの狭く限定されたものとなっていることから、様々な体験が不足し、運動能力、コミュニケーション能力、思いやりの気持ちなどは育まれませんし、自分のことを自分でできない子は人助けができる状態にはなれない傾向が強くみられます。社会や自然から本物を知る経験や体験の不足は、大きな問題といえるのです。

 最近の子どもはつまずいてよく転びます。その時、顔から倒れ込んで顔のけがや骨折をする子どもが増えてきました。これは、明らかに運動能力や反射神経の欠如で、体を使った外遊び不足から生じる現象です。

 「子どもを取り巻く教育環境等に関する調査」(※)(平成22年)では、地域活動に「参加経験がある」47%、「これから参加したい」17%、「興味がない。今後も参加しない」36%との結果が出ています。そこで、「地域活動に参加して良かったこと」を挙げてもらったところ、「やりがいを感じた」60%、「新しい仲間ができた」48%、「地域の大人とつながりができた」32%、「人に認められて嬉しかった」28%などと答え、地域活動ならではの、やりがいや新しい仲間ができたことへの喜びがひしひしと伝わってきます。「地域活動に参加しなければよかった」と答えた子どもは一人もいませんでした。地域や自然の中では、“自分で考え、自分で判断し、自分が実行し、その責任は自分がもつこと”が最低限必要になります。地域活動や自然体験活動が“総合的な教育活動”といわれる所以です。

(※)「子どもを取り巻く教育環境等に関する調査」柏市教育委員会生涯学習課(平成22年 6・7月)
 

家の手伝いと親の姿勢

平成29年10月6日

 自立の原点が“生活力の習得にある“ことは前回延べましたが、子どもたちと合宿をしてきて30年前と比べてほとんど変わっていない気になる点があります。

 合宿は寝食を共にすることから、ベッドの整理・整頓、掃除・洗濯、食事の準備・片付けなど、生活に関するすべてのことは自分で処理しなければなりません。しかし、ふとんや毛布がたためない、洗濯ができない、ホウキが使えない、ご飯が炊けない、包丁を使ったことがない、といった子どもが多いのです。なかには、料理した魚がかわいそう、目玉の付いている魚に対して気持ち悪いと言って食べない子が2割近くいるから驚きです。
 
 私たちは生活の中から多くのことを学びます。頭で覚えた知識と体で覚えた技能の両方が理解できて初めて使えることにつながります。しかし、生活体験の乏しい子どもは、実際に使う場面を経験していないからできないのです。少なくとも小学校に入るまでには、家の手伝いを通して最低限の生活力はしっかりと身につけさせる必要があります。
 
 平成22年に行った調査(※)から「親の姿勢と、子どもたちの家の手伝い」(表1)を見てみると、「おはようなどのあいさつ」を“させている親”80%に対し、“している子”73%が最も高く、以下、「食事の準備や片付け」を“させている親”42%と“している子”48%、「朝、自分一人で起きる」“させている親”44%と“起きている子”40%と続きます。その他の全ての項目においても親と子の数値がほぼ連動するのです。親が家の手伝いをさせていないから子どもはできていない傾向が見られるので、合宿での経験が自信喪失につながったり外出嫌いになったりしないことを切に願いたいものです。
 
【表1】親の姿勢と、子どもたちの家の手伝い
表1.JPG
※)「子どもを取り巻く教育環境等に関する調査」
柏市教育委員会生涯学習課(平成22年 6・7月)

子どもの自立を促すために

平成29年9月21日

 今、子どもの自立心や社会性の欠如などが指摘されていますが、親として子どもを自立させるためにはどうしたらよいか、自立についてあらためて考えてみましょう。

 人間の赤ちゃんは、生きる術を全くもたないまま生まれてくるため、子どもの命を守ること、食事(ミルク)を与えることが、親に求められます。そして、日常生活をとおしてお互いの信頼関係が形成されていきます。特に、乳幼児期の母親との信頼関係が重要で、コミュニケーションの基礎がここで育まれていきます。

 また、人間の脳細胞が約140億あり、この組み合わせのおよそ60%が3歳ぐらいにできあがると言われています。人生の基本となる幼児期に、家庭の内外で多くのことを経験・体験させることが、興味・関心を引き出すことにつながっていきます。

 私たちが家を建てるときの注意点は、地震や台風などの災害時でも壊れないようにその基礎づくりをしっかりとすることです。それと同じように、子どもには、将来一人で生きて行くための最低限の力をつけるように仕向けていくこと、つまり「子どもの自立」を促すことが親としての重要な責任であり役割なのです。

 自分のことが自分でできない子は、外へ出かけることを嫌います。生きる基本は「生活力の習得」にあり、「楽しい家庭」が重要なキーワードになってきます。まずは、①自分の命は自分で守ること、②自分で考えて自分で行動し、行ったことへ自分が責任を持つこと、③いろんな人とコミュニケーションがとれること、④買ってきた食材を使って自分で料理ができること、などが大切です。

 家庭では、特に「生活力の習得」を基本において、子どもの自立を考えていくことが重要になってきます。