~今、子どもたちのために大人が始める事~第4回「自分の命の分身が『自分のことを好き』と言えるように」

平成20年2月1日

 わたしは、クラス担任の時、「自分のことを好きですか。」とよく子どもたちに聞きました。
「一つもない。」という子もいます。「そんなことあるもんか。」といつも思います。

  あなたのお子さんはどうですか。子どもは、母親が命がけで産みます。だから子どもたちは、母親の命の分身です。その子が、「自分のこと嫌い。」と思っているなら、なんとかしないといけませんね。
 自分のことを少なからず好きだと思っている子は、エネルギーがあり、自分の命も友だちの命も大切にしようとしてくれます。とても大切な感情ですね。
むずかしい言葉で「自尊感情」「自己肯定感」などと呼ばれています。
 それでは、どうしたら、こういう感情が育っていくのでしょうか。


○プラス思考の言葉かけ
 「あなたは暗いではなくてもの静か」、「落ち着きがないのではなくバイタリティーがある」「ぐずではなくていねい。」
 同じ事象でも響きが全然ちがいますね。言葉は言霊で、たましいが入ります。こういうふうに言われたら、元気がでてきます。前回も述べましたが「お母さんはあなたを産んで幸せ。」という言葉が最高の言葉の贈りものですね。

○他人と比べるのではなく自己の成長を比べる
 「前よりずいぶん良くなってきたよ。」教室でもよく耳にする言葉ですね。にこっと子どもたちはします。過去の自分と比べて、その成長を見つめさせたいですね。

○小さな達成感を味わわせたい
 「やったあ。やればできるね。」こういう体験を多く積み重ねたいものです。大人がしんぼう強く見守ってくれたら、「ある日、とつ然できた。」そんな瞬間が子どもを待っています。
 自転車に乗れた、逆上がりができた、「おれやればできるね。」と言う感情、難しい言葉で自己効力感といいます。「どうせおれはだめやん。」ではなく「おれやればできるね。」こういう場面を学校や家庭やいろいろな場面で設けたいものです。そしていっしょに喜んであげたいものです。

○地域の教育力 
 今の子どもたちの中には、親、教師、習い事の先生と、この三者の間を毎日移動している子がけっこう多いのではと思います。この三者は子どもの教育に責任があります。どうしても「このままじゃだめだぞ。」が口にでてきがちです。
 しかし、むかしは、ここに近所のかみなりおやじ、だがし屋のおばちゃん、などなどが登場し、その発する言葉が子どもたちに勇気を与えてくれました。
  「しばらく見ない内にりっぱになったね。」【当時の中学生なんかにかける言葉、これが決まり文句】「おばちゃん、あんたのこんな所がすきね。」
  いい意味の責任のなさがプラスの言葉をあたえてくれるのです。多くの大人と出会わせたい、地域の教育力復活が待たれます。

○映画「15才学校?」について
 私の一人芝居の演目に山田洋次監督の「15才学校?」があります。半年学校に行っていない主人公、自尊感情ずたずたの子が、屋久島に向かって一人旅に出る。その子が旅の途中に出会った人々、トラックの運転手、登山家のお姉さん、一人暮らしの老人が、「15才かいいねえ。」「あんたにあえて良かった。」「わたしあなたのそのにきびの顔とってもかわいいと思う。」「お前の親は見事な子育てができているなあ。」と、少年に勇気をあたえてくれるのです。少年は成長し、最後は、一人暮らしのおじいさんを粗末にする息子に、涙ながらに説教する場面があります。「なんだ自分のお父さんに臭いって、あんたも赤ちゃんのころは、おじさいさんからオムツかえてもらったんだろう。そんなこともわからないのか。」感動です。自尊感情が育った彼は、おじいさんの心の痛みが無視できなかったのです。人は人と出会って育つのですね。だから「人間」は人の間と書くのでしょう。

○最後に
 子どもにお世辞を使いなさいといっているわけではありません。しかるときは、き然としからないといけないでしょう。 そういう場面もあります。
  ただ、「一つも好きな所がない。」という子どもは、しかられてばかりいるかもしれません。私たち大人は、未来を生きる子どもたちに、勇気をあたえる存在でありたい。「こんないいところがあるぞ。」「おれは息子としてお前を誇りに思うぞ。」「やればできたね、おめでとう。」
  いっぱい伝えたい言葉がありそうです。
 その向こうに子どもたちの笑顔が見えてきます。

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