宮田 正和 先生

思春期の子どもへの接し方

平成25年3月29日

 カウンセラー仲間との話では、中学生のカウンセリングはむずかしいとよく言われます。小学生は親と協力することで効果が上がり、高校生以上は、本人がだいぶ成長しつつあるので効果があがるということです。中学生は子どもから大人になる途中であり、前述したように、反抗期の時期でもあり親にとっても接し方がむずかしい時期です。

 一方、反抗期がない子どももいると言われています。その理由として

1)親の言うことに納得している
2)親と友達のような対等な関係
3)親を頼っている
4)親が,拘束や干渉をせず自由にさせる
5)親が怖くて反抗できず
6)親に嫌われないよう「よい子」でいた
7)他の兄弟が反抗したので反抗できず
8)特に強い希望や意見がなく親と対立せず、などがあると言われています。

 反抗期がないから、自我が成長しないとか、アイデンティティ(自己同一性)が確立できないわけではありません。反抗期がなかったから、将来心理的に問題がおこるということでもありません。反抗期があったかなかったかが重要なのではなく,自律する過程が重要です。思春期は、親や教師という児童期までの愛情を向けていた対象との関係を,新たな友人などの対象との関係をもとに再構築し,思春期・青年期の課題である自律へと向けた社会化,アイデンティティの確立をしていく時期です。

 親としては、思春期の子どもに対して、成長途上の葛藤している時期であると理解し、悩んでいたり、困っているときは話をじっくり聞き、やりすぎたり目に余るときは、きちんと叱ることが必要です。子どもの成長過程に、胸を貸すつもりで子どもと付き合うことが必要です。

 また子どもの成長に付き合うことで、親自身も成長していくことができます。子どもは成長に伴い親離れしていきます。親は子育てという名目で子離れしにくい場合がありますが、親も自分自身の人生を生きていくために、徐々に子離れすることも考えてみてください。
(参考:溝上慎一 教育と医学 2011-05)

思春期に多いこころの病気

平成25年2月28日

 思春期は環境の変化が多く,多感な時期でもあり,心の病気になりやすい時期です。

 まず、若い女性に多い過換気症候群(過呼吸症候群)は,不安から呼吸回数がふえ,血液中の酸素が増え,二酸化炭素が減るために,呼吸困難感,手足のしびれ感・硬直などが起こる病気です。最初は大変な病気になったと思いますが,実際には精神的な原因で起こるので,ゆっくり呼吸をして安静にしておくだけで良くなります。重症の場合でも精神安定剤を飲めば確実に良くなります。

 過敏性腸症候群は若い男女に多い精神的な原因による便通異常です。下痢型(男性に多い),便秘型(女性に多い),下痢・便秘交替型,ガス型(女性に多い)の4つのタイプがあります。いずれも精神的な原因なので消化器の検査をしても異常はありません。下痢型では外出しようとするとき,バス・電車に乗った時,教室で緊張したときなどに起こりやすく,その便意の不安から不登校になる人もいます。下痢型では、トイレに行きさえすれば落ちつくので、トイレに行きやすい環境をつくること,刺激の強い飲食物を避けることが大事ですが,重症の場合には、いろいろな薬があるので病院で相談してみるのもいいでしょう。便秘型の場合は,毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつけ,繊維分の多い食品で排便をうながすことも必要です。いずれのタイプでも精神安定剤やカウンセリングが必要な場合があります。

 摂食障害には、拒食症と過食症があります。食べ方は逆のようですがどちらも食べることへのこだわりが強いことでは共通であり、ともに肥満恐怖があります。特に拒食症は30?を切るようなガリガリの状態になり,栄養障害や電解質異常で心停止が起こり,命の危険もあり得る病気です。本人は病識がないこともありますが,心療内科などでの専門的な治療が必要な病気です。

反抗期とは

平成25年1月31日

 反抗期には幼児期の第一次反抗期と思春期の第二次反抗期があると言われています。第一次反抗期はおむつがはずれる時期の何でも“いやいや”という時期です。第二次反抗期は中学生前後の親の言うこと聞かず,親としては扱いにくい時期です。

 しかし心理学的には親からすれば反抗期でも,子どもの側からすると自我の発達に必要な成長過程と言われています。親のしつけや社会のルールと自分の思いの不一致に対して抵抗する中ですりあわせをしながら成長していきます。反抗期の子どもはそれまで何ともなかったことにやたらと腹が立ったり,たいした理由もないのにいらいらしたり,親が自分の行動に意見することが勘にさわるなどの言動が見られます。親からするとどの子も多少なりとも反抗期がありそうですが,大学生に「反抗期があった?」と聞くと意外と反抗期があったという学生は少なく驚かされます。すなわちその時期には自分は自然にふるまっているのに,まわりがやたらとうるさく言ったり,とがめたてたりされると感じています。いわば自分は正しいことをしているのに周りがまともに受け取ってくれないと思っているため,自分には反抗期はなかったと感じている可能性があります。

 一方「反抗」するためには,反抗する相手が必要です。その相手とは日常的に関わりがあり,本来逆らうべきでないとされている相手で,なおかつその相手は「反抗」したぐらいでは簡単に倒れそうにないということが必要です。従ってその相手とは親であったり,教師であったりします。社会のルールには本音と建前がありますが,反抗する子どもは,大人が本音と建て前の妥協している部分やある意味ごまかしている部分をついてくることが多く,大人としてもまともに向き合うことはつらいことがあります。しかし子どもは親を仮想敵として成長していくので,親としてはそれから逃げずに子どもと対峙していく必要があります。

(参考:佐々木玲仁 教育と医学 2011-05)

思春期とは

平成25年1月7日

 思春期という時期は,身体的にも心理的にも,一生のうちでもっとも変動のはげしい時期です。身体的には急に体が成長し,性ホルモンの分泌が盛んになり,内分泌系・生殖器官が成熟します。その結果第二次性徴があらわれ,男の子は男性らしく,女の子は初潮を迎え女性らしい体つきに変化していきます。同時に異性への関心が高まる時期です。年齢的には個人差がありますが,小学校高学年から高校低学年位で,男の子は女の子より少し遅れる傾向にあります。

 またいわゆる「第二次反抗期」「心理的離乳期」として親への依存と独立の間をゆれ動く時期です。反抗期については次回で詳しく述べたいと思いますが,親に反抗することで,親離れしていく時期です。しかし現代のように子どもの数が少ないと,子どもも親離れできず,親も子離れしにくい場合があります。エリクソンという心理学者は,思春期とその後に続く青年期は,子どもが自らの自己同一性 (アイデンティティ)を確立する有用な時期といっています。アイデンティティとは、「自分とは何か」という感覚であり,「これこそが自分である」(自己確定感),「この自分でよい」(自己肯定感),「今後もこの自分でやっていける」(自信),「自分は社会にとって意義のある存在だ」(自己有用感)という感覚が集まったものです。この時期に自分の心と体のアイデンティティがしっかりできていないと,真の大人になっていけません。

 アイデンティティができるためには,自分を写し出す鏡が必要です。鏡にあたるのが親であり,仲間です。自分の言動を親や仲間に照らしてみて,その反応や評価で自分自身のアイデンティティを作り上げていきます。