荘田 朋子 先生

新連続講座~性のこと、メディアのこと、できる限り伝えていきたい~第6回 思春期の性について(6)

平成22年4月5日

 前回に続き、思春期に問題になりやすい婦人科的症状についてお話します。

(4)月経前症候群
 生理の直前になると、妙にいらいらしたり、落ち込んだり、お腹が痛い、頭が痛い、体がだるい、むくみっぽい、等、色々な体調不良が起こる方がおられます。これは、生理と生理の丁度中間で起こる排卵後に分泌される「黄体ホルモン」の作用で起こると言われており、「月経前症候群」と呼ばれます。これは、出ているべき黄体ホルモンで起こる症状ですから、体が悪いわけではないのですが、ご本人もつらいし、周りの方も大変だったりします。お子さんが時々ひどくいらつく方は、時期に注意してみて下さい。

 これは、1・対症療法:痛み止め、利尿剤(むくみを取る)、安定剤等で症状のある間おさえる 2・漢方薬:前回書いたのと同じ系統の漢方薬で、症状が軽くなることがあります。 3・低用量ピル:原因となる排卵を抑えますので、症状が軽くなることが多いです。

(5)かゆみ、おりもの
 かゆみの原因としては、10代の方では、ナプキンかぶれが一番多いのではないかと思います。毎月、生理中や生理の後にかゆみがある、という方は、ナプキンが合わないのです。かぶれの場合は、まず原因を取り除くのが一番なので、ナプキンを色々変えてみて下さい。どうしても続く場合、布ナプキンが良い人もあります。タンポンにするという方法もありますが、タンポンを使う場合は入れっぱなしにならないように注意して下さい。タンポンも生理の血を全部吸いこむ訳ではなく、お腹の中に押し返す可能性があります。

 かゆみと一緒に、豆腐かすのようなおりものがある場合は、カンジダ膣炎が考えられますので、婦人科を受診しましょう。
 おりものは、体質的なものも多く、小中学生くらいからずっとある、という場合は問題ありません。しかし、セックスを経験したあとに急に増えた、というと、性感染症の可能性もありますので、これも婦人科を受診して下さい。
 

新連続講座~性のこと、メディアのこと、できる限り伝えていきたい~第5回 思春期の性について(5)

平成22年3月2日

 今回と次回は、思春期に問題になりやすい婦人科的症状と、その対処法についてお話しましょう。

(1)生理不順
 生理が始まってしばらくの間は、生理の調節機構(視床下部~脳下垂体にあります)が大人になっていないので、生理不順のことがよくあります。ですから、多少の不順は心配ないでしょうが、「半年以上止まっている」「ダラダラと長く続く」「頻繁にある」といった時は治療した方がよいです。
 その場合はホルモン療法になります。お子さんにホルモン剤というと心配されるお母さんもおられますが、生理が始まっているということは、大人と同じホルモンバランスでいいのです。それが足りないから生理がおかしくなっているので、ホルモン治療は、足りないものを入れる訳ですから、貧血の時造血剤を飲むのと変わりません。

(2)生理痛
 生理痛は、「生理的で、病的ではない生理痛」と、「病的な生理痛」に分かれますが、10代の方の生理痛は、まず病的ということはほとんどありません。上手に症状をコントロールできればOKです。 治療法は、大きく3種類です。

1・痛み止め:生理痛をガマンさせるお母さんがよくいらっしゃいますが、生理痛はガマンする必要はありません。毎月痛くなると分かっているなら、早めに飲むのがコツです。

2・漢方薬:漢方薬で生理痛が軽くなったり、生理の量が軽くなったりする方もいます。ただし、効き目に個人差があります。また、痛み止めは痛い時だけでいいですが、漢方薬は毎日、1日に2回とか3回とかの服用が必要です。

3・低用量ピル:前回書いたように、服用すると大部分の方で月経が軽くなるので、よくそちらを主目的として服用されるようになりました。10代の方でもOKです。
 しかし、もし年々ひどくなるのがはっきりしている時には、念のため婦人科を受診して下さい。未婚の方は、お腹の上からの超音波で診察しますので、診察の心配はいりません。

(3)生理の量が多い(月経過多)
 これも、10代の方では病気ではないことがほとんどです。日常生活で困るほど多い場合は、

1・止血剤:生理の量の多い間だけ服用すると、幾分減ることが多いです。効き目に個人差があることがあります。
2・漢方薬:上記 
3・低用量ピル:上記

 

 

新連続講座~性のこと、メディアのこと、できる限り伝えていきたい~第4回 思春期の性について(4)

平成22年2月10日

 今回は、避妊法の話をします。避妊の方法はいくつかありますが、どれも一長一短があります。また、確実性に差があります。

 今、一番一般的に使われている避妊法は、コンドームですね。コンドームは、安価で手軽に使えるという点、また性感染症の予防効果があるという点では良い面がありますが、肝心の避妊効果は実は100%ではありません。
 使い方も問題で、正しい使い方は、性交渉の最初から最後まで使わなければなりません。よく、射精の直前に使われますが、この場合射精の前に分泌液に混じって出た精子のために妊娠することがあります。また、正しい使い方をしたつもりでも、妊娠してしまうことがあります。

 避妊の効果が確実な方法は、二つしかありません。低用量ピルと、避妊リングです。このうち、避妊リングは、お産をされたあとの方に向きますので、お産前の方には、実は低用量ピルが一番良いのです。このほかの、膣外射精(いわゆる「外出し」)その他、雑誌等で避妊効果があると書かれている方法などは、正しい避妊法ではありません。

 ピルと言うと、危険な薬と思い込んでいる方が多いのですが、ピルの副作用が言われていたのは、昔の量の多いピルしか無かった時代の話で、今のピルは「低」とついていて、ホルモンの量が最低限で、非常に安全なお薬です。
 低用量ピルは、1日1回きちんと服用すれば、避妊の確実性はほぼ100%です。また、副作用ならぬ「副効用」の面が大きく、大部分の方で、生理痛が軽くなったり、生理の量が軽くなったりします。生理は28日型で順調になります。
 ですから、中学生や高校生でも、毎月生理が重くて生活に差し支えるような方はそれだけの目的で低用量ピルを飲まれてもいいし、実際飲んでいる方もいます。
 子どもさんにピルというと、抵抗のある保護者の方もおられるでしょうが、生理があるということは、大人と同じホルモンのバランスだということで、ピルは害にはなりません。
 ですから、もし、お子さんが性交渉の機会を持っておられることが確実ならば、とりあえずピルを飲ませることは、妊娠を防ぐ大きな意味があります。

 ただ、性交渉をすると、二つのことが起こります。一つは妊娠、もう一つは性感染症です。ですから、妊娠はピルで防いで、性感染症はコンドームで防ぐ、というダブルの防御が望ましいのです。
 ピルは、飲んではいけない方が3種類あります。タバコを1日15本以上吸う人、高血圧症の方、特殊なタイプの頭痛持ちの方(前兆に光の見えるタイプの片頭痛の方)です。

 

新連続講座~性のこと、メディアのこと、できる限り伝えていきたい~第3回 思春期の性について(3)

平成22年1月16日

 私は、毎年高校2年生を対象に性の話をします。
 性交渉、いわゆるセックスをすると、二つの事が起こります。一つは「妊娠」、もう一つは「性感染症」です。
 書いてしまえば当たり前のことですが、これだけの事が分かっていなくて、望まない妊娠をしてしまったり、性感染症をもらってしまったりする女性が、あとを絶ちません。男性は妊娠はしませんが、病気をもらったり、それを大切な彼女にうつしてしまったりします。

 結婚した男女が愛し合って、赤ちゃんができるのは当然のことで、赤ちゃんは本来待ち望まれて生まれてくるものですが、まだ産めない、という時期に妊娠してしまうと、女性は重大な決断を迫られます。産むのか、産まないのか。
 産むとなると、まだ学生であれば退学せざるを得ないことが多いでしょう。何の資格も得られずに、社会に出ていろんな体験をすることもできず、子育てせざるを得ません。母親になる事は素晴らしい事ですが、私たちは、母である前に女性であり、女性である前に人間です。人間として豊かになってから、母親になる、というのが順序ではないでしょうか。
 もし、産まない、となると、その女性は中絶手術を受けなければなりません。心も体も傷つきます。
 望まない妊娠をしてしまったら、女性は、産むのも大変、産まないのも大変なのです。

 ですから、セックスというのは、本来、ちゃんと結婚して、いつでも父親母親になれる準備ができてからするものです。しかし、まだ結婚はできない、しかし愛し合っていて、セックスをする事態に立ち至った、という場合は、絶対に避妊が必要です。避妊については、次回詳しくお話をします。
避妊しないでセックスしてしまった場合、女性は、次の生理が来るまで、妊娠しなかったかどうか分りません。それまでずーっと心配しなければならないのです。それが女性にとってどんなにひどいことか、男性はよく心に留めなければなりません。
 避妊しないセックスは、暴力なのです。

新連続講座~性のこと、メディアのこと、できる限り伝えていきたい~第2回 思春期の性について(2)

平成21年12月8日

 子ども達は、養護教諭の先生方には、ずいぶん率直に色んな話しをしているようです。そんな、中学校の養護教諭の先生にうかがうと、子ども達が最初にセックスを経験する場所は、ほとんど「子ども部屋」なのだそうです。しかも、その時、他の部屋に家族がいることも多いのだそうです。
 今は、子ども部屋は2階にあって、上がってしまえば分からない、というおうちが多いのでしょうが、これは、親の立場としては、よく考えなければならないことですよね。
 昔は、「異性の友達が来たら、ドアを開けておく」などというエチケットがありましたが、今もこういうエチケットは、もっと大事にされてもいいですよね。

 親としては、子どもに異性の友達ができたと気づいた時は、「物分かりのいい親」になって知らん顔をしている方が楽だと思います。しかし、結果を考えると、そうも言っていられませんね。
 子ども達にこう言えば、セックスに至らないでいてくれる、という魔法の言葉はありません。そこをどう防ぐか、結局は、各家庭で、親子が真剣に向かい合うしかないのだと思います。
 男のお子さんの場合は、彼女を傷つける(心も体も)ことは絶対許さないよ、とか、女のお子さんの場合は、自分の体は、簡単に触らせてはいけないよ、とか、イヤだと言っていいんだよ、とか…。
 私の知っているお母さんは、お嬢さんが高校生の時できた彼氏に、「○○子は私の大事な娘だから、娘を傷つけるようなことをしたら許さないからね」と言い渡したそうです。そのお陰か、お嬢さんは無事に成人して、結婚して、今は赤ちゃんもいるそうですが。
 子ども達に、どこか親の姿が見え続けている、ということは、ひょっとしたら、一つの歯止めになるかもしれません。

 しかし、今の若い人たちは、「付き合ったら、そのうちセックスするのは当たり前」という感覚です。これを押しとどめるのは、至難の業と言わざるをえません。

新連続講座~性のこと、メディアのこと、できる限り伝えていきたい~第1回 思春期の性について(1)

平成21年11月4日

 「思春期の性」というのは、とても難しい問題ですね。親の立場としては、できれば、なるべく避けて通りたい。でも、決して避けることのできない問題ですよね。
 性教育については、よく「寝た子を起こすな」という言い方がされますが、問題は、はたして寝ているのか、もう起きているのではないか、ということです。

 東京都での調査で、子ども達の性交経験率は、中3男子で9.8%、女子で4.3%、高3男子44.3%、女子35.7%です。調査によっては、高3女子では半数近いというものもあります。
「それは都会の話でしょう」とおっしゃるでしょうが、実は、10代の妊娠・中絶・出産は、地方の方がかえって多いのです。

 2006年度の10代女子の人工妊娠中絶率は、全国平均が8.7件/10代人口千人当たりであるのに対し、福岡県は13.5件で、実は全国ワースト2です。
中絶が多いという事は、妊娠自体が多いわけで、出産に至る例も多いのですが、若年出産は、その後の子どもの虐待につながる危険が高いと言われています。
 わが子ほど、親の思い通りにならないものは無いですから、それを、まだ子どもである10代の親が育てようとすると、思い通りにさせようと、「しつけ」の名のもとに虐待する、ということに至りやすいのです。

 私の経験でも、特に高校生くらいの年令で妊娠中絶に至るような子どもさんは、もう中学生くらいで性交を経験していることも多いようで、どういう年令から具体的な性教育をするのか、どういう内容でするのか、というのが、非常に問題になってきますが、決め手は無いのが実情です。