横山 正幸 先生

海外の人々の暮らしや文化に関心をもつ子にしよう

平成24年12月25日

 昔に比べ、地球はとても小さくなってきました。米国やヨーロッパの経済の変化は、直ちに日本の経済に影響します。地球の反対側で起こったニュースも瞬く間に世界を駆け巡ります。流行も世界中あっという間に広がります。諸外国に目を転じた場合、留学や海外赴任、海外就職は、今や特別な人々に限られたことではなくなってきました。
 しかし、最近の日本の若者は留学や海外での就職、赴任を望まない「内向き志向」の傾向にあることが懸念されています。福岡県(2012年)の調査でも「将来、海外に出て留学や仕事をしたいと思いますか」という質問に、「思う」と答えた子は小学6年生で28.9%、中学2年生で27.5%、高校3年生でも32.1%に過ぎません。「思わない」子の割合が、「思う」子を大きく上回っています。理由として、どの学年でも多いのは「語学に自信がないから」「海外に行く必要性がないから(日本でも十分に勉強や仕事ができるから)」ですが、注目したいのは「海外に興味がないから」という理由を挙げている子が少なくないことです。小学生で31.3%、中学生で33.4%、高校生で30.4%もいます。
 もちろん留学や海外での就職は、「しなければならない」というものではありません。しかし、世界はますますグローバル化しています。そうした時代を生きる子ども達には、知らない国でも行ってみようという意思と積極的な態度が強く求められます。それには、語学のこともありますが、まずは外国に興味、関心をもつことが大切です。そのためには、小学生をもつ親として日頃から次のようなことを心がけてみましょう。
1.まず、親自身が海外の人々の生活や文化などに、また海外で働く日本人に興味、関心をもつようにしましょう。
2.TV番組に海外の人々の生活や文化などを紹介しているものがあったら、子どもと一緒に見て、その感想などを語り合ってみましょう。
3.新聞に掲載されている海外のニュースについて、子どもにも理解できるようなものがあったら、わかりやすく説明してやり、それを話題に子どもと語り合ってみましょう。
4.時にはインターネットを積極的に活用し、子どもと一緒に海外の人々の生活や文化を調べてみましょう。これは、1、2、3と共に親子のコミュニケーションにもなります。
5.電車などで外国の人を見かけたら日本語でもいいので「どちらのお国からみえましたか」などと積極的に話しかけてみましょう。子どもは、まちがいなくそんな親の姿を見て外国や外国の人に興味をもちます。
6.機会があったら、海外からのホームステイを受け入れたり、国際交流の場に子どもと一緒に参加したりしてみましょう。

朝、自分で起きる子にしよう!

平成24年11月28日

 子どもが登校し、1時間目から学習にしっかり集中できるには、低学年なら始業時間の2時間くらい前、高学年なら1時間半くらい前には起きることが大切です。頭脳は目覚めてすぐ活発に働くわけではないからです。そして、もう一つ重要なことは、自立起床です。起きるべき時間に自分で目を覚まし、起きることです。これは自主的な生活態度の基礎となる習慣で、学習にも深く関係しています。


 自立起床は、きちんとしつけておけば7歳頃までに十分できることです。ところが、福岡県社会教育委員有志の会(2006年)が行なった調査によると、「今朝、お子さんを起こしましたか」という質問に小学2年生の母親の63.7%、父親の21.7%が「はい」と答えています。一人の子を両親で起こすことは、まずないでしょう。したがって、親が起こした割合は合せて80%以上となります。問題は、この傾向が学年が上がってもそのまま続いていることです。因みに6年生の母親では63.3%、父親では22.2%、合せて85.5%が子どもを起こしています。福岡県立社会教育総合センター(2003年)の調査では、毎朝、子どもを起こしている中学生の母親が58%、父親が11%もいます。


 かつては小学校に入ると、親や先生から「自分のことは自分で!」とよく言われたものですが、今はあまり耳にしません。朝起きは自分のことです。親がいつも起こしていると、それが当たり前になり、自分ではできなくなってしまいます。年齢相応に自立させるのは親の役割です。朝、自分で起きる子にするには、例えば「○○ちゃんは、もう3年生でしょ。いつもお母さんが起こしてるけど、これからは自分で起きれるようになろうね。起きなかったら、遅刻しないか心配だけど、お母さんはもう『起きなさい!』って言わないことにする。○○ちゃん、自分で頑張ってみよう!」などと、親の思いをきちんと伝え、忍耐強く見守ることです。そして、できたらしっかりほめてやってください。もちろん、朝起きは朝だけ考えてできることではありません。必要な睡眠を十分とっていることが前提となります。それには、過剰なテレビ視聴などを制限し、早く寝させることです。


 ただ、遅刻の不安から学期中はなかなか実行できないという方がおられるかもしれません。その場合は、夏休み中など時間的にゆとりのある時期に取組むのも一つの方法です。

お手伝いをさせよう!

平成24年10月26日

 手伝いには、親が毎日している家事の意味を理解したり、自分も家族の一員なのだという意識を高めたり、将来の自立に必要な生活技能や、自主性、耐性といった心の能力を育むという意義があります。また、自分も「できるんだ!」という自信を高めることにもつながっています。何でもしてもらうだけの「お客様」では、生活技能や自主性、耐性はもちろん、親への感謝の気持ちや家族への思いやりの心も育ちません。


 しかし、最近は手伝いをしていない子が以前に比べるとかなり増えています。例えば、「国立青少年教育振興機構」(2011年)の報告によると、家の中の掃除や整頓を「あまり」「まったく」手伝ったことのない子が6年生で32.4%もいます。背景には、生活が便利になり、子どもにしてもらうことがなくなったという事情や、子どもがイヤがることはさせたくないという親の過保護な態度があります。しかし、これでは子どもは育ちません。


 状況を変えるには、まず親が手伝いの大切さをよく理解し、積極的に機会をつくってやることが必要です。掃除、洗濯物干し、食事づくり、食器洗い、回覧板を持っていくなど、何でも親が自分でしてしまうのではなく、子どもでもできそうなことはやり方をきちんと「教え」、「任せる」ことです。もちろん、自発的にするようになるまでには、親に強い意志力と忍耐力が求められます。また、生活のあり方について少し発想を変えてみることも大切です。食料品をいっぱい買い込み、冷蔵庫を満杯にしていては、お使いの機会が奪われます。時には「ない」場面をつくってみましょう。

 
 なお、手伝いをしたらお金や物を見返りとして与えている親御さんがいます。これはできるだけやめましょう。「報酬」目的の手伝いになってしまうからです。手伝いはいわば無償の「家庭内ボランティア活動」です。そこに大きな意味があるのです。与えたいのは、親からの心のこもった「ありがとうね」「助かったよ!」といったねぎらいの言葉です。

ほめて伸ばそう!

平成24年9月28日

 人は誰でもほめられると嬉しいものです。子どもは特にそうです。そして、この嬉しいという気持ちは、意欲や自尊感情(自分はかけがえのない、大切な存在なのだという感情、自分に対する肯定感)を高め、自らを向上させようとする力となります。


 福岡県青少年アンビシャス運動推進室(2010年)が、小学4年生と6年生計7,948名を対象に行なった調査研究によると、親からほめられる頻度の高い子ほど自尊感情の高い傾向にあることが明らかにされています。子ども時代に親や先生からほめられた体験が、その後の人生に大きな影響を与えたことを回想している作家や科学者、芸術家は少なくありません。

 
 ところが、日本の親や先生は欧米に比べると、ほめることが概して苦手です。ほめるよりもむしろ欠点や短所に目を向け、叱ったり、注意したりして育てようとする傾向が強くあります。これでは、意欲や自尊感情を高めるより、むしろ子どもの心を萎縮させたり、否定的な自己像の形成を促したりすることになりかねません。ほめることに関して欧米が「加点主義」だとすれば、日本は「減点主義」の国と言ってよいでしょう。


 ほめること・認めることの上手な親であるには、まずこうした日本の文化に気づくことが大切です。そして、その上で次のことを心がけたいものです。

(1) 子どものちょっとした伸びや良さに目を向け、積極的にほめましょう。
(2) ほめる時は、どんなところがよかったのか具体的にほめましょう。
(3) 他の子や兄弟姉妹と比較してのほめ方は、できるだけ控えるようにしましょう。
(4) 子どもの言動の「結果」だけを見てほめるのではなく、「過程」にも注目しましょう。
(5) タイミングを逃さず、できるだけその場でほめましょう。
(6) 笑顔でうなずく、「ありがとう!」と感謝の言葉をかけるなど、ほめ方には色々あります。工夫してみましょう。

自尊感情について

平成18年4月3日

 自尊感情というのは、自分に対する肯定的な感情のことを言います。自分はそれなりの能力と、良い面をもった大切な存在なのだという気持ちのことです。自尊感情の高い子は、精神的に安定し、何事にも積極的です。自分を律し、自分を大切にした生き方ができます。志をもって前向きに生きる子であるための最も重要な条件と言ってよいでしょう。

 ところが、最近の子ども達はこの感情がとても低い傾向にあります。福岡県(2001)の調査によると、「自分は何をやってもダメな人間だという感じが『よく』『時々』ある」という子が小学6年生で48.4%もいます。この数値は外国の子どもと比べて非常に高いものです。因みに私の教え子のグリシェンさんが同じ調査を中国・新疆ウイグル自治区の区都ウルムチの小学5・6年生に実施した結果では、半分以下の19.9%でした。日本の子ども達は 「あなたの良いところは?」と尋ねられてもあまり言えません。それが「良くないところは?」と聞くとたくさん出てきます。自分を肯定的に捉えることができないのです。最近の子ども達の様々な問題行動の背景にはこの自尊感情の低さが考えられます。

 なぜ自尊感情が低いのでしょうか。それは、体験すべきことを体験していないからです。例えば、遊びのなかには仲間をリードしたり、難しい課題にチャレンジし、それを克服して自信をつけたり、仲間から尊敬されたり、認められたり、様々な体験が含まれています。ところが、その遊びが今ほとんどありません。親の手伝いをしたり、幼い子の面倒をみる体験も欠けています。欠点を指摘されることはあっても、人の役に立って誉められる機会はめったにありません。これで自分が有能な、大切な存在だという感情が育つでしょうか。

 子どもの自尊感情を高めるのに特別の方法があるわけではありません。遊びや手伝いや何か良いことをして認められるといった、何気ない日々の生活体験の積み重ねが大切なのです。児童期は自尊感情が育つ大事な時期です。せめて休日は友達と十分遊ばせてください。自分のことはもちろん、家の手伝いもきちんとさせてください。そして、勉強のことだけでなく、子どものちょっとした良さや伸びに目を向け、心から誉めてやってください。

尊敬の心について

平成18年3月1日

 私がかつて、トルコの大都市イスタンブールやアンタルヤで小学校の4・5年生を対象に行った調査によると、94・3%の子が先生を「とても」尊敬していると答えていました。因みに私の大学院の教え子、李仲濱さんが中国と日本の小学6年生の実態を調査し、比較した結果では「とても」「まあまあ」を合わせて中国96.2%に対して、日本は52.9%でした。教育社会学者の深谷昌志氏が米国、中国、ニュージーランド、ブラジルなど6か国の子どもの教師に対する尊敬意識の実態を比較した結果でも日本の子ども達は最も低い割合を示しています。こうした傾向はお父さんやお母さんに対しても同様です。

 先生や親を尊敬していなければ、言うことを素直にきく子にはなりません。実際、日本青少年研究所の調査によると、米国や中国の高校生は「親に反抗すること」は「してはならないこと」だと80%以上が答えています。しかし、日本の高校生ではそれは15%程度で、「本人の自由」だという答えが85%を占めています。

 最近は、学級崩壊とまでは言えなくても、「一年生プロブレム」という言葉が出てきているように、低学年から授業中の私語や立ち歩きなど、勝手な行動をする子は珍しくありません。この背景には大きな原因の一つとして、尊敬の心の未発達が考えられます。親や教師を尊敬することができれば、子どもはその教えを受け入れ、学ぶことができます。自分を律し、高めることができます。親や教師との関係は友達的であるのが良いと言う人がいますが、それは違います。ふだん友達のように接している親や教師が、子どもが悪いことをした時、注意して子どもは素直にきくものでしょうか。むしろ強く反発するでしょう。育てる者、育てられる者では本質的に立場が違うのです。

 尊敬の心は年齢とともに自然に身につくものではありません。日頃から、ものごとを教えてくれる人、自分を育ててくれる人、例えば年長者や先生を敬うことを親自身が態度で示すことです。また、両親がお互いに尊敬している姿を見せることも大切です。折りにふれ年長者や先生、親に対する口のきき方や態度についてきちんと教えることが大事なのは言うまでもありません。

コミュニケーション能力について

平成18年2月1日

 これまで長年にわたって保育園・幼稚園、そして小・中学校の先生方や社会教育関係者、さらには地域の方々と心豊かな子どもたちを育むために、体験学習や教育ボランティア活用の授業の推進、教育キャンプ、地域子ども会づくりなど様々な取り組みを行ってきた。理論と実践の調和を信条としている人ときちんと話せるということは、子どもの発達にとってとても大切なことです。それは話すことによって、?社会生活がスムーズにできるようになるだけでなく、?色々な知識を得たり、?相手を深く知り、人間関係を豊かにしたり、?ストレスを解消したり、?嫌なことを拒否したり、危険な場面で助けを求めたりすることができるようになるからです。

 子どもの話す力は、本来、幼児期の終わり頃までにかなりの水準に達します。当然、小学生になったら自分の要求・考え・気持ちをきちんと文章で言うことができるはずです。ところが、今の子ども達はそれができません。お腹が痛くなった時もせいぜい「痛い!」だけで、どこがどんなふうに痛いのか、「症状」をきちんと説明できないのです。また、5年生にもなったら先生に紙を求める時も「先生、すみませんが紙を1枚ください」ぐらいは言っていいはずです。ところが、「先生、紙!」のように一語か二語ですます傾向があります。いわば「単語人間」なのです。この傾向は中学生、高校生でも同様です。

 なぜでしょうか。最も大きな原因の一つは、子どもに話す体験を十分与えない親の、過保護な関わり方にあります。例えば子どもが「ジュース!」と言っただけで親が子どもの心を察して要求にすぐ応じていては、子どもはそれ以上言う必要がなくなってしまいます。コミュニケーション能力も他の能力と同様、体験しなければ育たないのです。

では、どうしたらよいのでしょうか。それには、まず話すということの大切さを親自身がしっかり認識し、日常生活場面で子どもの話す体験を豊かにするように努めることです。具体的には次のことを心がけましょう。

 子どもが言おうとしていることを先取りしない。
 子どもからの質問、意見、感想などには積極的に耳を傾け応答するようにする。
 コミュニケーションの際の適切な音声やよい表現、あるいは豊かな表情などはしっかりほめてやる。
 子どもにメッセージ体験や説明体験など、人の前で話す機会を積極的に与えてやる。
 時には言い方を教えてやる。
 お父さんやお母さん自身、コミュニケーションに関して子どもの良いモデルとなるように心がける。

教師に対する意識の変化について

平成18年1月5日

 小学生時代、教師に対する子どもの意識や態度はずっと同じというわけではありません。岸田元美氏(1958)の研究の結果に従うと、原則的には次のように変化します。

 1年生の初め頃は、子どもにとって教師は、幼稚園や保育園時代の延長の感じで「先生」というより、むしろ一緒に遊んでくれる年長の遊び相手、あるいは優しく生活の世話してくれる人と見なされています。まだ学習や生活面の指導者とは見られていません。

 ところが、2・3年生頃になると教師は学習や生活面の指導者として意識されるようになってきます。そして、同時に教師を慕い、強く愛着を示すようになってきます。この時期、子ども達は先生が大好きです。小学校生活を通じて2・3年生の頃が教師との関係が最も穏やかで楽しい時期と言われています。教師に対して子どもは、素直でうちとけ、心を開いてくれます。また、教師のすることに感動したり、先生から何か手伝いを頼まれたり、指示されると、それを喜び忠実に実行しようとするのもこの時期です。

 4年生頃になると、教師に対する絶対視が崩れ、教師を仲間に入れたがらなくなります。以前のように甘えません。公平な扱いを求めたり、時には反抗的態度をとったりするようになってきます。2・3年の時と比べると、教師に対してあまりオープンではなく、否定的、閉鎖的な態度が強くなり、心理的な距離が増大します。こうした変化は、自我意識の発達や自主的態度の発達にともなって以前ほど学習や遊びに教師を必要としなくなってきたことや人を見る目が発達してきたことによるものと思われます。

 5・6年生頃、本来なら再び穏やかな態度を教師に示すようになってきます。しかし、それは低学年の時のような依存的、開放的な態度ではありません。4年生の頃に示した独立的、閉鎖的な態度をもちながら、一方で指導者としての教師を肯定、信頼、尊敬し、従順な態度を示すというものです。ただ、現状は高学年になっても先生を先生と思わないような子も多く、教師が苦労しています。これでは子どもは伸びません。この背景には教師を信頼せず、安易に批判する最近の大人の態度があります。少し考えてみたいものです。

睡眠について

平成17年12月1日

 脳生理学者の松本淳治氏(1993)の資料によると、10~13歳の睡眠時間は10時間です。実際、京都大学文学部が1947年に行った調査では、6年生の睡眠時間が男子で10時間25分でした。これだけの睡眠をとるには9時前に寝なければなりません。それが今では、就寝時刻11時以降の子が6年生で50.5%にも達しています(北九州市立教育センター,2005)。当然、睡眠時間は短くなります。福岡県(2001)の調査では6年生で睡眠6~7時間が48.0%、4~5時間が3.5%を占めています。睡眠時間にはかなり個人差があります。しかし、それでも6年生では10時間はともかく9時間の睡眠は欲しいところです。

 このように睡眠の短い生活では、笑顔の爽やかな子を期待することはできなません。朝、自分で起きることができず、起きてもイライラし、食欲もないでしょう。いつも疲労感があり、授業中も勉強に集中できない子になってしまいます。福岡県が2003年にある小学校で実施した調査によると、「授業中、眠くなることがある」という子が「よくある」「時々ある」を合わせて6年生で何と71.2%もいました。北九州市立教育センターが2004年に小学3・4年生~中学3年生の就寝時刻を、早寝、平均、遅寝に分け、学習意欲との関係を調べています。その結果を見ると、中学3年生を除きどの学年でも一貫して早寝群が最も高い学習意欲を示し、遅寝群は最も低い学習意欲を示していました。また、就寝時間が遅く、睡眠不足では気分も悪く、学校に行くのも億劫になります。指定都市教育研究所連盟(2003)の調査によると、毎日の生活が「とても楽しい」という子が9時台に寝ている子では44.5%であるのに対して、11時台では29.2%にまで下がっています。また、福岡県(2001)の調査によると、学校に行きたくないと感じたことのある子は6年生で、82.3%いますが、その理由として圧倒的に多いのが「体の疲れや、睡眠不足」で、56.6%にも達しています。これでは、有能な先生が一生懸命授業をしても成果はあまり期待できません。

 子どもが元気に楽しく小学校での生活をおくり、しかも学習に専念できるためには、早寝早起きの習慣がとても大切です。お子さんの睡眠について今一度見直してみてください。

小学生の心の発達について

平成17年11月1日

 小学校低学年(1・2年)では、良いことや悪いことの判断を自律的にすることはまだ十分できません。親や先生の言動にしたがって判断し、行動する傾向が強くあります。ですから、この時期、親や先生の言葉や態度はとても大切です。


 中学年(3・4年)になると、親や先生への依存性は以前よりずっと弱くなり、前回述べたように友達との結びつきが強くなってきます。「心の離乳」が始まりつつあるのです。その結果、子どもの意識や行動は友達から色々影響を受けることになります。その一方、親に対してはちょっとのことで反発したり、口答えするようにもなってきます。小児科医で児童学の権威である平井信義氏はこの時期のことを「中間反抗期」と呼んでいます。ただ、この時期の口答えは多くの場合、子どもの自立心の表れです。ですから、いたずらに押さえつけたり、逆に受け入れたりするのではなく、聞くべきところはちゃんと聞き、だめなことは「だめ!」としっかり諭すことが大切です。

 低学年(1,2年)では表から見える行動と心の中の思いはだいたい一致しており、よく見ていれば子どもが何を考えているか、どんな気持ちなのかおよそはわかります。しかし、高学年(5・6年)では心の中の世界が芽生えてきて、表面的には明るく振る舞っていても心の中では、大人と同じように別のことを考えているというようなことが起こってきます。また、自分の性格・能力・容貌について口には出さないけれど心の中で色々思い始めるのもこの頃からです。しかし、子どもの心は自分を客観的に評価するまでには育っていません。そのためその判断は正確ではなく、理由のない劣等感を抱いて子どもなりに悩んだりすることもあります。あまり極端に歪んだ思いに陥っているような場合は、適切な親のアドバイスや激励が必要です。なお、良いこと悪いことについては低学年の子のように親や先生の言動に依存してではなく、自分の「良心」に基づいて適切に判断する力がかなり育ってきます。