鎌田 怜那 先生

1.知っておきたい!子どもの自立の第一歩~安心の土台づくり~

令和7年8月26日

 「アタッチメント」という言葉を聞いたことはありますか?直訳すると「ピタッとくっつく」という意味です。心理学では赤ちゃんと特定の大人との間に育まれる、深い信頼の絆のことを指します。実はこのアタッチメントが、子どもの心の安定や、後の学び・人間関係の土台になっていくのです。

 では、赤ちゃんはどうして「ピタッとくっつく」のでしょう。その人が好きだから?…実は、そうではありません。赤ちゃんは不安や怖さを感じたときに、近くの大人にピタッとくっつきます。これが本能的なアタッチメントです。くっつく相手やくっつき方は成長とともに変化していきます。

 このように、アタッチメントは自分の心身を守るための行動なので「子どもが助けを求めたときに応える」ことがとても大切です。「知らない場所に来た」「知らない人がいる」「ママが少し離れた」…そんなときに、子どもが不安そうにひっついてきたら、まずはギュッと受け止めてあげてください。「初めての場所だね」「ちょっと怖かったね」などの声かけがあると安心感につながります。

 こうして「困ったときには頼っていい」「自分は守られている」という感覚が育つと、子どもは少しずつ自分で安心を感じられるようになり、やがて自分から離れていく=自立の第一歩を踏み出します。

 子育ての大きな役割は、子どもが心身ともに自立していくためのサポートです。そのためには、アタッチメントという“安心の土台”が欠かせないのです。これから4回に渡りアタッチメントの魅力をお伝えしますね。

2.知っておきたい!子どもの自立の第一歩~「安心の土台」の作り方~

令和7年9月18日

 アタッチメントが人の発達において、とても大事だと前回お伝えしました。では、どうやってアタッチメント関係を築けるのでしょうか。今回は「安心の土台」の作り方をお伝えします。

 アタッチメントは他者との信頼関係を築くために大事な感覚で、乳児期にアタッチメントのひな形が作られ、大人になってからも影響を及ぼします。実は、乳児の時の親子のやりとりがアタッチメント形成につながっているので、皆さんは無意識のうちにお子さんのアタッチメント形成に貢献しているということになります。

 まずは「お世話」です。赤ちゃんの手となり足となり、一緒に過ごす時間が長い人との間に信頼が芽生えます。そして、お世話を通して「目を合わせる」「触れる」「抱く」ことがとてもいい効果を発揮します。この三点は日頃から意識してみてください。そして、お子さんが「助けを求めた時」は応じましょう。このようにして「助けを求めたら応えてくれる」ことを乳児期に学びます。これが「安心の土台」となるのです。

 安心の土台を得た子どもは、親から少し離れても安心して遊んだり、友だちと関わったりすることができます。これが「心の安全基地」となり、信頼できる人がいるからこそ外の世界に挑戦でき、自己肯定感や人間関係の基礎につながっていきます。特別なことをする必要はありません。泣くわが子に安心の笑顔で応え、背中をさすったり抱っこしたり…。その繰り返しが、人生を豊かにする力をはぐくむのです。

知っておきたい!子どもの自立の第一歩 ~「安心の土台」が不安定な時とは~

令和7年10月15日

 前回は、アタッチメントの「安心の土台」の作り方についてお伝えしました。では、もしこの土台がうまく築けないとどうなるのでしょうか。今回は「不安定なアタッチメント」について考えてみましょう。

 アタッチメントが不安定な場合、子どもは「助けを求めても応えてもらえないかもしれない」と感じることがあります。すると、必要以上に泣いて注意を引こうとしたり、逆に甘えることをあきらめて感情を抑え込んだりします。また、甘えと攻撃が混在したような予期できない反応を示すこともあります。どれも、子どもなりの生きるための工夫なのです。

 このような経験が続くと、「人に頼るのは怖い」「自分なんてダメだ」といった気持ちが芽生えやすくなります。幼児期に形成された関係のパターンは、心の癖となって残り、大人になってからの人間関係にも影響します。相手に過剰に依存したり、逆に距離を取りすぎたりするのも、その延長にあるかもしれません。けれども、子どもが本当に求めているのは“完璧な親”ではなく、“自分を見てくれる人”です。

 たとえ一時的に不安定な時期があっても、気づき・受け止め・寄り添うことで安心は取り戻せます。大切なのは、“親の責任”というより“経験の積み重ね”や子どもの気質・性格も関わっているということ。どんな人でも完璧な対応はできません。もし「思い当たるかも」と感じても、遅すぎることはありません。安心を取り戻す関わり方は、いつからでも始められるのです。次回はその「回復」や「修復の方法」についてお伝えします。

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