2.学力が低下する~デジタル使用で「思考の中枢」は抑制される~

令和8年1月19日

 仙台市の約7万人の小中学生を対象にして行われた、スマホ等の使用時間と学力の関係を調査した結果では、中学生の次の2つのグループのうち数学の点数が高かったのはどちらだと思いますか?

A)家での勉強は毎日30分未満、スマホ等の使用60分未満
B)家で勉強を毎日2時間以上、スマホ等の使用4時間以上

 スマホを4時間以上使用すると、毎日2時間勉強をしても授業しか受けていないグループより点数が低いという結果で、A)が答えです。スマホと勉強で睡眠時間が少なくなるからと考える人もいると思いますが、睡眠時間をそろえて比べても同じ結果でした。また、他の教科でも同じ傾向でした。この結果から、スマホ等を使うと脳の働きが変化して学力が低下してしまうのではないかと考えられます。

 脳の前の方にある“前頭前野”という領域は、何かを考えたり、覚えたり、理解したりするという知的活動に関して働く「思考の中枢」を担っています。東北大学のある研究で、言葉を調べるのに紙の辞書で調べた場合と、スマホで調べた場合で前頭前野の活動を比較しました。この実験の結果、

スマホを使って調べている時には、前頭前野の活動が抑制されていることがわかりました。

 2分間で調べられた単語の数は紙の辞書で5つ、スマホだと6つでしたが、後から単語の意味を思い出せるかテストをすると、紙の辞書では5つのうち2つ思い出せたのに対して、スマホで調べた単語は一つも思い出せなかったそうです。数を多く調べられても内容を記憶していなかったのです。

 脳の機能は使われないと発達しませんので、スマホを使用している間は前頭前野は鍛えられなくなってしまいます。前頭前野には自分の感情を制御したり、他人の気持ちや意図を推し量ったりする機能もあり、コミュニケーションをする上でも重要な機能を担っています。

 例えば、リアルで将棋をしていたとします。負けそうになって「もうイヤだ。止めたい」と思ったとしても、「相手に悪いな」と思ったら我慢して最後まで勝負を続けます。そんな時、前頭前野は頑張って働いています。ところがアプリで将棋の場合はリセットできてしまいますね。相手を思いやる前頭前野が育ちません。

 実は、思いやれなくなるのは他人のことだけではありません。自分のことも思いやれなくなってしまいます。例えば、学校から帰って先にゲームを始めてしまい結局宿題ができなかったら、先々困るのは自分です。「自分の将来のことを考えて」ゲームをするのを「がまん」できるかどうか。前頭前野が鍛えられていないと、ゲームの欲求に負けてしまうのではないでしょうか。

 スマホ使用で学力が低下するとしたら、スマホをやめたら成績がアップするでしょうか。次回は、スマホを使わないとどうなるのかについてお話しましょう。

参考情報:川島隆太著「スマホが学力を破壊する」集英社新書
     榊浩平著「スマホはどこまで脳を壊すか」朝日新書

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