3.先回りの言葉をグッと我慢。子どもの心を育む「引き算の声かけ」とは

令和8年6月16日

 前回は、あえて何も言わずに「待つ」ことが最大のサポートになるとお話ししました。 今回は、その見守る時間の過ごし方と、子どもの気持ちに整理がついてきたときの声かけについて、一緒に考えていきましょう。

 立ち直るまでにかかる時間は、子どもによって一人ひとり、大きく異なります。数時間でケロッとする子もいれば、何日も引きずる子もいます。これは気質や発達のペースによる、ごく自然な個人差。だからこそ、保護者にとっての一番の踏ん張りどころは、目の前のこの子が自分で顔を上げるまで待てるかにかかっています。

 とはいえ、ただ待つのは本当にしんどいもの。見ているこちらまで苦しくなって、つい、

「だったら、◯◯先生に相談しちゃえばいいじゃない」
「いつまでもクヨクヨしていてもしょうがないでしょ」
「はい、もう切り替えて。次がんばろ!」

 …と、答えを差し出して急かしたくなります。私自身も堪えきれずに口にして「やってしまった」と反省したことが、何度もあります。

 そんなとき、試していただきたいのが、自分の気持ちに名前をつけること。

 「あ、私は今すごく焦ってるな」
 「落ち込む姿を見るのが不安なんだな」

 と、自分の感情を言葉にするだけで、心の暴走にブレーキがかかることが心理学の研究でも示されています。自分の感情を客観視できると、心に余白が生まれ、子どもに向けようとした言葉をいったん手元に置いておけるようになります。

 そうして「待つ」を乗り越え、子どもがようやく「さて、どうしようか」と顔を上げたとき。 ここからの一言が、何よりも大事です。

 意識したいのは、次の行動を「指定」せず、「問いかける」こと。

 「次はもっと早めに準備しなさいよ」
 「次のテストは、まず英語からやり直しね」
 「だったら明日、先生に話してきな」

 こうした先回りの言葉は、悪気なく子どもの思考のハンドルを親が握ってしまっている状態です。 代わりに、 

 「これから、どうしていきたい?」
 「一緒に手伝えること、ある?」

 と、声をかけてみてください。

 そして、子どもから「手伝ってほしい」「どうしたらいいか分からない」と言われたら、そこではじめて、

 「次は、どのタイミングで準備したらうまくいきそう?」
 「先生に伝えたいこと、一緒に整理してみる?」

 と、隣で一緒に状況を整理する側に回ってみてください。

 親が答えを出さず問いかける。たったそれだけのやり取りが、子どもの中に「自分の力で状況は変えられる」という小さな確信を積み上げていきます。この「自分で決めた」の積み重ねが、将来、子どもの心が悲しさでいっぱいになったときにも、「大丈夫」と信じて自らの足で踏み出す力となり、これからの人生を支えてくれる「しなやかな心の芯」になります。

 次回は最終回。 娘とのある日の何気ない会話から気づかされた、比較の時代を生き抜くための心の土台についてお届けしますね。

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